失う恐怖を味わうくらいなら初めからいらない。幸せも。
実は今日3月28日は、わたしの誕生日。
3年前の今日、夫にエンゲージリングをプレゼントされた。
これからの未来を疑いもせず信じて、本当に幸せだった。
でも、夫はいない。
包み込むように優しくハグしてくれた夫はもういない。
夢だったのだろうか。幻想だったのだろうか。
でも指輪は確かにここにある。
あれからもずっと左手の薬指にはめたまま。
今が夢の中なのだろうか。
本当は死んだのはわたしの方で、わたしのほうが目が覚めないままなのだろうか。
現実世界で夫の癌は根治していて、夫が眠ったままのわたしを看病しているのかもしれない。
じゃあ夢から醒めるのはいつ?
夢なら早く。醒めて。
こんな私にも誕生日プレゼントをくれる友人がいるらしい。
そして何がほしいか聞かれた。
欲しいものなんてない。
モノなら壊れたり無くしたりしても、また買えばいっかという程度のモノが欲しい。
失う恐怖を味わうくらいなら、初めからいらない。
絶望を回避できるのなら、もう幸せなんかなくてもいい。