夫の死体と暮らす私。さぁここはどこでしょう。
気づいたら亡くなった夫と一緒にいました。もちろんその目は開くことはない。体も
動くことはない。
亡くなったら普通、腐敗していくんじゃなかったっけ。なんとなく気づいたけど、夫
の体を起こしてソファにもたれさせて私もそのとなりに座った。
となりに座って何を話すわけでもなく。ただとなりに座って夫との時間を楽しむ。がん
センター有明の個室から一緒に見た綺麗な夕日とか、グアムのアウトリガーのビーチで
泳げない私の手を繋ぎながらシュノーケリングした時のこととか、繋いだ手をポケット
に入れて一緒に歩いた上野だったかな。紅葉の季節イチョウが世界を黄色く染め上げた
あの光景とか。
会話がなくても。一緒にいるだけで幸せな気分になれた私たち。
そのまま何日経過したのだろう。夫の体はきれいなままでした。いつもの夫の良い香り
がする。とても心地よくて大好きな香り。またクンクンうるさいとか言われそう。
夫が亡くなって1年半。最近、落ち着いてきました。夢で夫と会えているからなのかも
しれません。夢の中で再会した時、夫が既に亡くなっている事実を認識していることが
多い。それを本人に伝えたり、伝えなかったり。
あと何年かわからないけれど、思い出と夢と幻覚でもうしばらく生きていけるかもしれ
ない。